2025年06月20日
ポルトガル手しごとの旅
モンサラーシュ(Monsaraz)に到着した翌朝。丘の上には、雲ひとつない青空の中に、白く輝くいくつかの高い塔と煉瓦色の城壁がそびえていました。その姿にますます心がときめき、早々に朝食を済ませて村へ向かいます。
ポルトガル南部、アレンテージョ地方。スペインとの国境に近い丘の上に位置する中世の村、モンサラーシュ。かつてイスラム勢力(ムーア人)の要塞だったこの地は、1167年にポルトガル初代国王アフォンソ・エンリケスによって奪還されました。その後13世紀に要塞が再建され、国境防衛の拠点となったそうです。
中世の城壁に囲まれた白い村
城壁内は車両通行禁止。手前の駐車場に車を停め、坂道をゆっくり歩いて村に入ります。 村全体を囲む分厚い城壁がかつての要塞を物語っています。その城門越しに見える空の青さと、広がる平原の景色はとても爽快。
軍事的な要塞であったはずのこの城壁の村が、「ポルトガルで一番美しい村」と呼ばれるのはなぜでしょう?それは、モンサラーシュが中世の城壁や城をそのまま残し、路地や建物も当時のまま大切に保存されているから。現代的な手がほとんど加えられておらず、まるで時間が止まったかのように静寂な空気が村全体を包んでいます。
石畳の村を歩いて
白い壁と石畳の路地を進むと、商店や村人の家々が並びます。村の中心にはサンタ・マリア教区教会(Igreja Matriz de Santa Maria do Castelo)があり、そこから先の道は急な石畳の坂となってお城へと続いていきます。
石造りの家々と小さな木の扉は、おとぎ話の世界に迷い込んだかのよう。17〜18世紀に建てられたものが多く、伝統的な石積みの建築様式で、今も実際に住宅や宿として使われているそうです。ただ、人の気配はほとんどなく、暮らす人々に出会うことはありませんでした。「どんな暮らしなのだろう…?」そんな想像を膨らませながら、さらに歩を進めます。
教会前の十字架には、ポルトガルらしいアズレージョ(装飾タイル)が施されていて、清楚で品のある美しさが印象的でした。
さらに進むと、村の最南端に城壁が現れます。階段をのぼれば、見渡すかぎりの絶景が広がります。壁の中には現在も使われている闘牛場があり、スペインに近いこの地に、闘牛文化が根付いていることを感じました。
この地域は、世界で初めて「星空保護区(Starlight Reserve)」に指定された場所でもあるそう。なるほど、たしかにこれは“天空の村”と呼びたくなる、街の明かりがほとんどない自然のど真ん中。漆黒の夜空にはたくさんの星がきらめいていました。
散策を終え、ふもとの村から見上げたモンサラーシュは、夜のライトに照らされて、また違う美しい姿を見せてくれました。
店主がめぐる旅
2024.5.9 Monsaraz Alentejo
旅先で出会ったポルトガルの手しごとをお届けする小さなオンラインストア「&COMPLE(アンコンプレ)」店主・阪倉みち代
気の向く時に綴る旅のミニジャーナルです。(かなり時差があります✈︎)