2025年08月26日
アヴェイロから高速道路を一気に走り抜け、雄大な自然を眺めながらポルトガルの中部の山を半周ほどして、アルコンゴスタ(Alcongosta )村を目指しました。8年前に訪ねた小さな村のバスケット職人、パウロさんの工房を再訪するのがこの日の旅の目的です。
そのときは、別の栗のバスケットの職人さんを訪ねたのですが、あいにく留守。村の中をウロウロしていると、洗濯物を干していたおばさんが「この先を曲がったところにもバスケットを作っている人がいるわよ」と声をかけてくれたのです。
偶然がいくつも重なってたどり着いたのがパウロさんの工房でした。素敵なバスケットを抱えて浮かれた気分のまま、連絡先も聞かずに村を後にしてしまったのでした。
そのような訳で、あのブルーグリーンと白に塗り分けられたお家と、”Luis Poulo”と書かれた表札が目印。そして、記憶だけを頼りに、会えるかどうかもわからないのに、220kmもの道のりを走ってきたのでした。
村の入口に建つ「さくらんぼの里」の看板を見た瞬間、当時の記憶が一気によみがえります。石畳の道にも、村のあちこちにも、かわいらしいさくらんぼのモチーフが。「あっ!このさくらんぼのオブジェのを曲がったんだっ」記憶をたどるように進み、ついに目的の家にたどり着きました。
ところが、門には鍵がかかり、呼び鈴はありません。あたりに人影もなく、どうしよう…。思い切って大声で呼んでみます。
「パウローー!」
「パウロさーーん!」
何十回呼んでも返事はなく、やっぱりダメか…あきらめかけたその時。2階の窓越しに、けげんそうな表情でこちらをのぞく女性の姿が。思わず手を振って、ぺこぺこと頭を下げました。
すると入口のドアが開き、なんとパウロさんがニコニコ笑顔で出てきてくれたのです。
「パウロさん、わたしのこと覚えてる?」
「もちろんさ!」
そんなふうに迎えてくれて、ほっと胸をなでおろしました。再会を喜び合い、そしてチェスナッツのバスケットを譲ってほしいことを伝えると…
「もうチェリー摘みの季節だから、バスケットはひとつも残ってないよ」とパウロさん。えーーー!なんと、遅すぎたのです。
前回訪ねたのは、4月。ちょうどチェリーの花が芽吹いたばかりの頃で、バスケットを抱えてウキウキ歩いている私たちに向かって、村のおばちゃまたちが「あら!空っぽじゃないさくらんぼの収穫は6月よ」と冷やかしの声をかけてきました。
なんと今回は、「遅すぎた!」というオチ。
そういえばパウロさんが教えてくれたことを思い出しました。 栗の枝を落として土の中で寝かせ、春に掘り起こして乾燥させる。固くなった枝を裂いて編むのがチェスナッツのバスケット。
そしてそのバスケットは、6月のチェリー摘みに欠かせない道具として、昔から村の人々に使われてきました。チェリーの季節になると、みんなマイバスケットを片手に畑へと出かけていく。そんな村の風景を思い描きました。
工房で作業するパウロさんの写真は、8年前に訪ねたときのもの。わたしが持ってる飴色のバスケットは、パウロさんが何十年も使い続けきたチェリー詰み用のマイバスケットです。 そしてパウロさんが手にしていた新品のバスケットは、今、わたしの傍で少しずつ歳を重ね、色づいてきています。
ここまで来たのにバスケットを手に入れられなくて、少しがっかり。けれど「今度はもっと早く連絡してくれれば、ちゃんと取っておくよ」と言って、連絡先を渡してくれたパウロさんのあたたかな笑顔にすっかり癒されました。鉄柵を挟んで向こうとコッチ、短い立ち話の最後に、記念の一枚をパチリ。
はい、次回は必ず日本からご連絡をしてまいります。
2024.5.15 ALCONGOSTA,Centoro
2024年5月、ポルトガル各地を2800km走り、手しごとと風景を辿った21日間の旅。